構成パターン一覧
分類の考え方
本調査では、59のB2B SaaSサイトのトップページを対象に、各ページを構成するセクション(ヒーロー、機能紹介、導入事例など)の並び順に着目し、統計的な手法でグループ分けを行いました。
セクション構成の「文字列化」
各サイトのトップページを上から順にセクション分解し、それぞれに役割タグ(ヒーロー、機能紹介、導入事例など)を付与しています。たとえば、あるサイトの構成が以下のようになっているとします。
ヒーロー → サービス概要 → 機能紹介 → 導入事例 → CTAこの「セクションの並び順」を、文字列のように扱います。2つのサイトのセクション構成がどれだけ似ているかを測るために、正規化レーベンシュタイン距離を使いました。
正規化レーベンシュタイン距離とは
レーベンシュタイン距離とは、ある文字列を別の文字列に変換するために必要な「挿入・削除・置換」の最小回数です。たとえば「猫」を「犬」にするには1回の置換が必要なので、距離は1です。
これをセクション構成に応用します。サイトAの構成を:
ヒーロー → 機能紹介 → 導入事例 → CTAサイトBの構成を:
ヒーロー → サービス概要 → 機能紹介 → 料金プラン → 導入事例 → CTAとすると、Aに「サービス概要」を挿入し「料金プラン」を挿入すればBになります。距離は2です。
この距離を、長い方のセクション数(この例では6)で割って 0.0〜1.0 の範囲に正規化します。値が0に近いほど似ている構成、1に近いほど異なる構成ということになります。
階層的クラスタリング
59サイトすべてのペア(1,711通り)について距離を計算し、距離行列を作成します。この行列をもとに、階層的クラスタリング(平均連結法) を実行しました。
階層的クラスタリングとは、最も似ているサイトのペアから順にグループを作っていく手法です。
- 最も距離の近い2サイトをまとめてグループにする
- グループ間の距離は、メンバー間の距離の「平均」で計算する(平均連結法)
- これを繰り返し、すべてのサイトが1つのグループになるまで続ける
このプロセスで得られたツリー構造(デンドログラム)を適切な位置で切断することで、まず10のクラスタに分割し、小さすぎるパターン(1〜2サイト)を近いパターンに統合して、最終的に6つの構成パターンに整理しました。
技術的な詳細
- 距離関数: 正規化レーベンシュタイン距離(各サイトの主タグ出現順序列に適用)
- クラスタリング: scipy の
linkage(method='average')+fcluster(criterion='maxclust') - クラスタ数の決定: 最大クラスタの比率が全体の40%を超えないように自動調整
同じパターンに分類されたサイトは、「どんな情報を」「どんな順番で」見せているかが似ているということです。
6つのパターン概要
| パターン | サイト数 | 平均セクション数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| A: 王道フルスペック型 | 22 | 10.2 | 機能紹介から信頼構築、情報提供まで網羅する教科書的な構成 |
| B: 網羅フルコース型 | 1 | 15.0 | 考えうるほぼ全てのセクションを盛り込んだLP的な構成 |
| C: 実績訴求・多機能型 | 9 | 9.4 | 実績と製品ラインナップの幅広さで信頼を構築 |
| D: 価値提案・CTA直行型 | 22 | 8.4 | 要点を絞り、最短経路でコンバージョンへ誘導 |
| E: 料金・比較検討促進型 | 4 | 10.0 | 料金や活用シーンを早期に提示し、比較検討を後押し |
| F: コミュニティ・ブランド型 | 1 | 6.0 | 世界観とコミュニティの活気で自然な導入を促す |
パターンAとDの二大勢力
パターンAとパターンDがそれぞれ22サイト(37.3%)を占め、合計で全体の約75%に達します。この2つは「情報を網羅して納得させるか」「要点を絞って素早く行動させるか」というトップページ設計の最も根本的な選択を反映しています。
コンパクトさと情報量の比較
パターンごとのセクション数を比較すると、構成のボリューム感に明確な差が見えてきます。
| コンパクト | 標準 | 充実 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| パターン | F (6.0) | D (8.4) | C (9.4) | E (10.0) A (10.2) | B (15.0) |
- コンパクト型(パターンF・D): 情報を絞り込み、離脱前の転換や自然な関心喚起を狙う
- 標準〜充実型(パターンA・C・E): ニュース、サポート情報、リソースなど幅広い情報を提供
- 超充実型(パターンB): 1ページにランディングページ的な情報を全て集約
CTA配置の戦略
コンバージョンへの誘導(CTA)の配置方法も、パターンによって異なります。
| パターン | CTA配置 | 戦略 |
|---|---|---|
| A: 王道フルスペック型 | ページ末尾が中心 | 情報を十分に提供した後、納得感で転換 |
| B: 網羅フルコース型 | 早期 + 末尾 | 課題に共感した段階で早期に捕捉 |
| C: 実績訴求・多機能型 | 中盤〜末尾 | 実績を見せた後に行動を促す |
| D: 価値提案・CTA直行型 | ページ内に複数回 | 説得ポイントごとにCTAを配置 |
| E: 料金・比較検討促進型 | ページ末尾が中心 | 比較検討に必要な情報を出し切ってから転換 |
| F: コミュニティ・ブランド型 | 明示的なCTAなし | 世界観で惹きつけ、自然な導入を促す |